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第8回日本メディカルAI学会参加レポート~医療AIの技術トレンドおよび実臨床における利活用の動向~

2026年6月5日・6日の2日間、東京・虎ノ門で第8回日本メディカルAI学会学術集会が開催されました。
本記事では、学会で知り得た医療AIの技術トレンドや社会実装の動向についてレポートします。
データアナリティクスマガジンの運営元であるデータアナリティクスラボ株式会社では以下のような支援事例がございます。
- レセプトデータを用いたコホート研究の解析プログラム作成・統計モデリング生体情報データを用いた患者予後予測モデルの構築
- 歩行データを使った認知症判別モデルの構築
- ウェアラブル端末の生体・行動データを用いたバイオマーカーの探索
- 聴診音を用いた複雑音検知モデルの構築
医療・ヘルスケア分野における分析案件の実績もございますので、お気軽にご相談ください。
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学会概要
日本メディカルAI学会は、基礎医学・臨床医学・情報科学などから領域横断的に専門家が集い、医療領域におけるAIの発展を目指した学会です。今回の学術集会の来場者数は、前年から約1.5倍に増加し約1,200名に達しました。医療とAIの融合をテーマに、研究者や医療従事者、企業関係者が活発な議論を交わす場として注目を集めていることがうかがえます。
開催概要
- 学会名:第8回日本メディカルAI学会学術集会
- 日程:2026年6月5日(金)- 6日(土)
- 会場:虎ノ門ヒルズフォーラム
- 開催形式:現地開催(対面のみ)
- 公式サイト:第8回日本メディカルAI学会学術集会(リンク)
- 参加費用:一般非会員(前期登録)17,000円、(後期登録)20,000円
当マガジンの運営元であるデータアナリティクスラボ株式会社では、データ利活用に関する専門的なスキル・知識・経験の提供に加え、社会課題の解決につながる研究や先端技術の調査にも取り組んでおります。こうした活動の一環として、今回は、医療ドメインをもつデータサイエンティスト5名で学会に参加しました。

学会の様子
本学会における技術トレンド
昨今、AI モデルは「特定のタスクに特化したモデル」から幅広い用途に対応できる「基盤モデル」へとシフトしています。さらに、自律的に行動する知的システムとしてのAIエージェントや、画像・言語・音声等を統合的に扱うマルチモーダルモデルも急速に進化しています。
医療分野においても、大規模言語モデルや画像セグメンテーションの基盤モデルが活用されています。また、対話型診断支援を目的としたVisual Question Answering(VQA)による画像への自然言語応答や、AIエージェントによる予約管理やレポート作成など、医療現場の多岐にわたる業務にAI技術が応用されています。
こうした技術は、診断の質と業務効率を高める臨床現場のパートナーとなり得ます。本学会でも、医療用基盤モデル、AIエージェントやマルチモーダルモデルを活用した診断支援や業務支援が大きなトレンドとなっており、一般演題やテーマセッションでは、診断・治療・予後予測から創薬支援、病院経営に至るまで、 医療全体の意思決定を支援する可能性が示されていました。
医療AIに関する現場での利活用動向
利活用の動向では、生成AIやAIエージェントが研究段階から実運用フェーズへ移行しつつあり、退院サマリー作成やカルテ入力支援など、業務負荷軽減に向けた活用が進んでいました。また、医用画像領域では、従来主流だった敵対的生成ネットワーク(GAN)に加え、拡散モデルを用いることにより、データの品質・多様性・安定性の向上が見られました。一方、説明可能性や責任所在、データ標準化といった社会実装上の課題も多く議論されており、技術開発と並行して、現場へ定着させるための運用設計の重要性を認識しました。
学会では、臨床に従事する医師が、自ら機械学習モデルの開発やデータ利活用に取り組む報告も多く見られました。医療機器メーカーからも、非エンジニア向けのモデル作成ツールが紹介されており、AI開発の技術的なハードルが下がりつつある印象を受けました。今後は「どの課題に、どのAI技術を適応するか」を見極めることが、これまで以上に重要になると実感しました。

データアナリティクスマガジンの運営元であるデータアナリティクスラボ株式会社では以下のような支援事例がございます。
- レセプトデータを用いたコホート研究の解析プログラム作成・統計モデリング生体情報データを用いた患者予後予測モデルの構築
- 歩行データを使った認知症判別モデルの構築
- ウェアラブル端末の生体・行動データを用いたバイオマーカーの探索
- 聴診音を用いた複雑音検知モデルの構築
医療・ヘルスケア分野における分析案件の実績もございますので、お気軽にご相談ください。
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注目したセッション
医療情報学会合同シンポジウム 医療AIの臨床実装を支える医療情報基盤とガバナンス
座長:浜本 隆二(国立がん研究センター研究所/理化学研究所 革新知能統合研究センター)
鎌谷 洋一郎(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)
医療AIと “標準化”
今井 健(東京大学大学院医学系研究科 疾患生命工学センター 医工情報学部門)
医療デジタルツインを目指す医療情報システム基盤の開発
河添 悦昌(東京大学大学院医学系研究科 医療情報学分野)
本セッションでは、医療AIの社会実装を支える基盤として、医療情報の標準化やデータ連携、ガバナンスの重要性について議論がおこなわれました。
医療AIの開発・活用には、医療用語やコード体系、データ交換規格の標準化が不可欠です。講演では、HL7 FHIRなどの標準規格を活用して医療機関間のデータ連携を進める取り組みや、医療デジタルツインの構築による新たなデータ活用の可能性が紹介されました。また、EU AI ActやISOなど、国際的な規制・標準化の動向についても触れられ、技術開発だけでなく運用やガバナンスの観点が今後ますます重要になることが示されました。
特に注目したのは、「標準化によってこそ医療AI開発が進む」という考え方です。生成AIの発展により、これまで人的負担の大きかった標準化作業の効率化も期待されており、医療AIを支える基盤整備が着実に前進していることを感じました。
一方、データ形式の標準化だけではなく、活用されるデータそのものの品質も重要な課題です。医療現場や患者の負担を増やすことなく、質の高いデータを継続的に収集・活用する仕組みづくりが、今後の医療AIの発展において重要なテーマになると感じました。
- HL7 FHIR (Fast Healthcare Interoperability Resources)
- 医療情報を標準化された形式で管理・共有するための国際規格です。異なる電子カルテや医療システム間でのデータ連携を容易にし、医療DXやAI活用の基盤となっています。
- EU AI Act
- EUが制定したAIに関する包括的な規制法です。医療AIを含む高リスクAIに対して、安全性や透明性の確保を求めています。
- ISO
- 国際標準化機構(ISO)が策定する国際規格の総称です。品質管理や情報セキュリティなどの基準を定め、医療システムの信頼性向上に活用されています。
ビジョン・言語モデルと医療AIエージェントが拓く次世代臨床レポーティング
座長:藤田 広志(岐阜大学工学部)
木戸 尚治(医療法人社団英明会 大西脳神経外科病院 放射線科)
臨床レポーティングをめぐるAI技術の現在地-VLMと医療AIエージェントがもたらす変化
藤田 広志(岐阜大学 工学部)
実臨床で役に立つ2つの診療補助AIの提案
井上 謙一(南大和クリニック 乳がんセンター)
Vision-Language モデルによる肺医用画像の所見生成と対話的理解
寺本 篤司(名城大学 情報工学部)
歯科パノラマX線画像からの顎嚢胞所見文生成―エージェント型生成AIへの拡張
細川 菜々香(岐阜大学大学院 自然科学技術研究科 知能理工学専攻知能情報学領域)
マルチエージェント基盤モデルによる信頼性の高い脳腫瘍診断
ラシド イサム(兵庫県立大学大学院 情報科学研究科/兵庫県立大学 先端医療工学研究所)
生成AIが臨床レポーティングにもたらす変化と課題:放射線科医の立場から
木戸 尚治(医療法人社団英明会 大西脳神経外科病院 放射線科)
本セッションでは、VLM(Vision-Language Model)やLLM(Large Language Model)によって、臨床現場におけるレポーティング業務が変化しつつある現状について報告がありました。ここで、レポーティングとは、診療記録のカルテ記載や医用画像の所見文作成を指します。
診療記録のレポーティング業務では、「問診内容」「診察所見」「診断」「治療方針」「説明内容」などを正確に残す必要があり、入力作業が医療者の大きな負担となっています。また、医用画像のレポーティング、すなわち読影では、医師が医用画像を観察・解釈し、さらに「症状」「診察所見」「検査値」「既往歴」等を統合して、診断および読影レポートの作成をおこないます。近年、検査需要の増加や画像の高精細化によって画像枚数は増え続け、読影量は膨大になっています。そのため、限られた時間で正確かつ効率的に読影をおこなうことが、臨床現場において解決すべき優先課題です。
演者からは、マルチモーダルAIによる読影支援や、ローカルLLMと音声入力を組み合わせた診療記録作成支援などが報告されました。いずれも医療現場の課題解決に直結する取り組みとして、活発な議論がおこなわれていました。
一方、説明可能性や責任の所在、医療従事者のスキル維持といった課題についても議論があり、人による確認・修正を前提とした運用体制や、導入後の評価・改善の仕組みを整えることが、今後の医療AIの社会実装を考えるうえで重要であると感じました。
AI技術を駆使したデジタルバイオマーカーの探索
座長:川上 英良(千葉大学医学部/理化学研究所)
岩見 真吾(名古屋大学大学院理学研究科 理学専攻生命理学領域)
AIと心臓シミュレーションによる心不全・突然死マーカー探索
藤生 克仁( 東京科学大学統合生理学分野 / 東京大学医学部附属病院不整脈センター /東京大学大学院医学系研究科先進循環器病学)
データ駆動型バイオマーカー研究:人工知能の役割と注意点
後藤 信一(東海大学医学部・総合診療学系・総合内科学)
体外式膜型人工肺患者における出血合併症の逐次予測:多時点統合機械学習モデルによる検討
布施 佑太郎(千葉大学大学院医学研究院・人工知能(AI)医学)
血液検査データを駆使した疾患動態予測
岩見 真吾(名古屋大学大学院理学研究科 理学専攻生命理学領域)
本セッションでは、血液データや心拍等の生体情報といった既存データをAIや数理モデルで解析し、新たなデジタルバイオマーカーを発見する研究が報告されました。
近年はウェアラブルデバイスや遠隔モニタリング技術の普及により、日常生活の中で継続的な生体データの取得が可能になっています。これらの時系列データを活用することで、従来は捉えにくかった疾患の早期兆候を検知し、予防や早期介入につなげる取り組みが進んでいることが示されました。
特に印象的だったのは、AIによって既存データから新たな指標を導き出せる可能性です。新規データを収集することなく価値ある知見を得られるため、研究開発コストの低減や、より効率的な医療研究への展開が期待されます。
また、デジタルバイオマーカーは早期発見だけでなく、慢性疾患の増悪予防や継続的な健康管理への活用も期待されています。一方で、AIによる解析結果の解釈性や、異なる集団・環境でも有効性を維持できるかといった課題も指摘されており、実用化に向けた検証の重要性が改めて認識されました。
少子高齢化が進む中、医療の重点が「治療」から「予防・早期介入」へと広がる中で、デジタルバイオマーカーは今後の医療を支える重要な技術の一つであると感じられる内容でした。
【株式会社TechDoctor】
TechDoctor(テックドクター)|デジタルバイオマーカーを開発しデータによる遠隔サポート医療を実現
- 外科手術の手術前から術後3ヶ月の回復過程を視覚化するパイロット・探索的研究
- 健康状態のモニタリングによる、妊産婦のメンタルヘルス不調および精神症状との関連調査
- PMS症状における、主観評価と生体指標の相関調査および症状の定量化
引用:https://www.technology-doctor.com/case
【中外製薬株式会社】
- 子宮内膜症の痛みの評価方法の確立
- ウェアラブル活動量計による運動時の身体活動データの評価
引用:https://www.chugai-pharm.co.jp/innovation/digital/digital_biomarkers.html
国内企業のウェアラブルデバイスの活用事例を調査したところ、主観的評価と客観的評価の紐づけや、患者の状態を点(院内)から線(日常)で把握するようなものが多くみられました。ウェアラブルデバイス取得データをを活用することで、これまで患者の主観的な情報から得ていた医療機関外での情報を、客観的に実際の生体反応と紐づけられる点が非常に有意義であると感じました。これにより、さらにパーソナライズドされたサービスの提供につながる印象を受けました。
当社の強みは、医療関連の資格保持者や臨床経験のあるデータサイエンティストが在籍していること、時系列データの扱いや分析経験があることです。今後より一層、医療領域の課題解決に貢献していきたいと思います。
さいごに
学会のポスター会場では、発表者と参加者が積極的に議論を交わす雰囲気がありました。
データ選定に関するディスカッションでは、「MRIの多様な撮像シーケンスの中で、なぜT2強調画像を選択したのか」といった点について意見を交わし、汎化性や臨床実用性の観点で互いの考えを深めることができました。また、「模擬カルテ作成」に関する発表では、発表者と近い距離感で意見交換をおこなうことができ、データの保持・管理方法・MCPサーバーの構成・システム全体のアーキテクチャに関する技術的な知見を共有しました。(※MRI:Magnetic Resonance Imaging / MCP:Model Context Protocol)
学会全体を通じて臨床現場における「AIとの向き合い方」や「人とAIの協業」について、活発な議論が交わされていました。医療AIが研究段階から社会実装のフェーズへ進みつつある中で、精度や信頼性などの技術的課題に加え、実臨床への適用を見据えた課題解決が必要であることを改めて認識しました。
データアナリティクスマガジンの運営元であるデータアナリティクスラボ株式会社では以下のような支援事例がございます。
- レセプトデータを用いたコホート研究の解析プログラム作成・統計モデリング生体情報データを用いた患者予後予測モデルの構築
- 歩行データを使った認知症判別モデルの構築
- ウェアラブル端末の生体・行動データを用いたバイオマーカーの探索
- 聴診音を用いた複雑音検知モデルの構築
医療・ヘルスケア分野における分析案件の実績もございますので、お気軽にご相談ください。
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今後も、学会参加や技術調査を通じて知見を蓄積し、お客様の課題解決や新たな価値創出に貢献してまいります。
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