需要予測とは?今すぐ役立つ分析手法・活用事例を厳選して紹介!

需要予測をおこなうことで、多くの事業課題解決のヒントを得ることができます。本記事では、そのヒントを得るための分析手法について紹介いたします。

目次

需要予測とは?

需要予測とは、自社の製品・サービスの売上や申し込み、つまり顧客からの需要・ニーズを予測することをいいます。また、自社の製品に限らず、市場全体の需要を予測する場合を指すこともあります。
予測に大きく貢献する変数を特定したり、どれくらいの確率で需要が発生しそうかなどを予測することができれば、ビジネスインパクトに影響を与えるアクションにつなげることができます。

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需要予測が解決する事業課題とは?

需要予測を用いることで以下のような事業課題のヒントを得ることができます。

  • 最適な在庫管理による機会損失や過剰在庫の削減
  • 需要予測に基づいて人員の配置を最適化し、適切な労務管理をおこなう
  • 顧客の需要を確率的に予測し見込み顧客の分類することで、限られた営業リソースを効率的に活用する

などといった内容が挙げられます。

上記のように様々な事業課題を解決するためのヒントを得ることができます。

需要予測を実現する分析手法

続いては様々な需要を予測するための手法について解説いたします。

回帰分析

回帰分析は「重回帰分析」に代表されるように、「目的変数」と「説明変数」を用いて数式で表現することができる手法のことです。
回帰分析の代表例である「重回帰分析」では、需要を量的な観点で予測することができるので、「どれくらい売上が立ちそうか」や「どれくらい来店がありそうか」などを予測することができます。「重回帰分析」について詳しく解説した記事もありますので、ぜひご覧ください。

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また、「ロジスティック回帰分析」を用いることで、「需要があるかないか」を確率で予測することができます。そのため「需要がある確率が80%以上の場合、積極的に営業をかける」「顧客の確率帯ごとに営業手法を選択的に変える」などの戦略に活用することができます。
「ロジスティック回帰分析」について詳しく解説した記事もありますので、ぜひご覧ください。

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時系列分析

時系列分析とは、時間経過・推移に伴って変化する「時系列データ」を分析することです。「時系列データ」とは、一定間隔の時間経過・推移によって観測・集約されるデータのことであり、観測される順番に意味があるという特徴を持ちます。

このような特徴のあるデータを以下のような手法を用いて分析することができます。

  • SARIMA(季節変動自己回帰和分移動平均:Seasonal AutoRegressive Integrated Moving Average)
  • ホルト・ウィンタース法(Holt-Winter’s / 三重指数平滑法:Triple exponential smoothing)
SARIMA

SARIMAモデルは、日本語訳が表す通り、さまざまな要素を加味した時系列分析手法です。
過去の値を用いて算出する自己回帰モデル(AR)と、過去の値の積み重ねから表現される移動平均モデル(MA)、さらに対象とする期間内で一定範囲内程度の変化に留める定常化(I / Integrated)処理に、季節成分(S / Seasonal)を加えたモデルをSARIMAと呼びます。

ホルト・ウィンタース法

後ほど紹介する指数平滑法に、季節成分とトレンド成分を考慮した時系列モデルです。季節成分やトレンド成分を含んだ式ですが、意図的に含まない形にすることもできます。

平均値による予測

平均値による需要予測は、多くの種類があります。以下が代表的に算出方法です。

  • 算術平均法
  • 移動平均法
  • 加重移動平均法
  • 指数平滑法

以下簡単に解説いたします。

算術平均法

算術平均法は、一連の数値の合計をその数値の個数で割ることによって計算できます。いわゆる一般的な『平均値』です。数式は以下のとおりです。

$$\bar{x} = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n} x_i$$

なお、各文字は以下のような意味を表します。

\(\bar{x}\)  … 算術平均
\(\sum_{i=1}^{n} x_i\)  … 全ての合計
\(n\)  … 数値の個数

移動平均法

移動平均法(Moving Average)は、一定期間のデータを平均し、その平均を時間の経過とともに更新する方法です。特徴として短期的なランダム変動を滑らかにし、データの中・長期的なトレンドを捉えることができます。数式は以下のとおりです。

$$MA_t = \frac{1}{k} \sum_{i=t-k+1}^{t} x_i$$

\(MA_t\)  … 移動平均
\(\sum_{i=t-k+1}^{t} x_i\)  … 期間内の合計
\(k\)  … 期間内の数値の個数

加重移動平均法

加重移動平均法(Weighted Moving Average, WMA)は、移動平均法の一種です。データ点ごとに異なる重みをかけて平均を計算します。直近のデータにより大きな重みを付け、古いデータに対しては小さな重みを付けることが一般的です。数式は以下のとおりです。

$$WMA_k = \frac{\sum_{i=1}^{k} w_i \cdot x_{i}}{\sum_{i=1}^{k} w_i}$$

\(WMA_k\)  … 加重移動平均
\(w_i\)  … 重み
\(k\)  … 期間内の数値の個数

指数平滑法

指数平滑法(Exponential Smoothing)は、時系列データの平滑化に用いられる手法の一つです。最新の観測値により大きな重みを置き、過去の全てのデータを指数的に減衰させた重みをかけて平均を求める手法のことを指します。数式は以下のとおりです。

$$S_{t+1} = \alpha \cdot x_{t} + (1 – \alpha) \cdot S_{t}$$

\(S_{t+1}\)  … 時点t+1における平滑化された値(求めたい予測値)
\(S_{t}\)  … 時点tにおける平滑化された値(求めたい数値の一つ前の時点で求められた予測値)
\(x_t\)  … 時点tにおける観測された実際の値
\(\alpha\)  … 平滑化係数(0と1の間の値)で、新しい観測値にどの程度の重みを置くかを決定する

現在(t時点)観測されている値\(x_t\)と、t時点(現在)を予測した値\(S_{t}\)(平滑化された数値)を用いて、t+1時点を予測する値\(S_{t+1}\)を求めている。

応用的な手法による予測

需要予測が可能な応用的手法として、以下のような手法があります。

  • MMM(マーケティング・ミックス・モデリング:Marketing Mix Modeling)
  • LightGBM(Light Gradient Boosting Machine)
  • サポートベクターマシン(SVM)
  • 深層学習(ディープラーニング)による各手法

これらの手法は、モデル構築の難易度や結果の解釈性において高度な専門性を必要とする場合が多いです。さらに、ドメイン知識も必要とする試行錯誤を前提とした手法でもあります。

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ビジネス活用例

販売数予測の事例

エンタメ業界における需要予測の活用事例として、コンサートイベントにおけるグッズの販売数予測をする、といった事例があります。

使用するデータは、これまでのコンサートでの売上やグッズの種別や価格などに加え、実施するコンサートチケットの売れ行きやファンクラブ会員に関する情報、そして会場の場所やキャパシティに関する情報などを使用します。

上記のデータでは、コンサートイベントがようやく開催できるようになったばかりの歌手・アーティストであると予測に使用できるデータが少ないことがあります。その場合、音楽ジャンルやデビューの状況、人気度合いなどが類似したアーティストのデータに加え、類似した会場で実施されるコンサートのデータなどを需要予測に使用するデータとして追加します。

またコンサート会場内の販売データは、POSシステムが導入できないことも多いため、販売データを手入力で管理することを強いられる場合があります。そのような状況で発生するデータは欠損値が発生しやすくなるため、対処が必要となります。例えばその対処として、過去の実績値や類似イベントのデータなどを用いて欠損値補完をおこなう、などが挙げられます。

これらのデータを用いて、本記事にて紹介した統計解析手法や機械学習手法を用いるなどして販売数を予測します。

ただし、予測結果をそのまま使用しない場合もあります。
例えば、発注の最小ロット数に合わせる必要があったり、戦略的な観点から在庫を残さず売り切ることを優先して予測数よりも少なく生産・発注する、などといった例があります。

このようにして、エンタメ業界ではコンサートイベントにおけるグッズの販売数予測(需要予測)をおこなっています。

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需要確率予測の事例

金融業界における需要予測の活用事例として、個人または法人など個々の顧客に金融サービスの需要があるかどうかを予測する、といった事例があります。

使用するデータは自社の顧客データです。顧客が個人であれば性別や年齢などの属性情報を用い、法人であれば創業年数などの、個人における属性情報などにに準ずる情報を用います。上記のような内部的なデータに対して、外部データとしては各行の金利やCIC1の信用情報などを活用することもあります。

これらのデータは不均衡データであることが多く、そのまま需要予測モデルを構築してしまうと、偏った学習をしてしまったり評価指標が機能しなくなるなどの問題があります。そのため不均衡データに対しては、アンダーサンプリングやSMOTE(Synthetic Minority Oversampling Technique)によるオーバーサンプリングなど、データの特徴に合わせた前処理が必要になります。

これらのデータを用いて前処理をし、モデルを構築します。返す結果は前述の通り「需要があるかないか」のどちらを表したラベル、もしくはそれぞれのラベルへの所属確率になります。

このように算出したラベルや確率を用いて、顧客の分類をおこなうなどして活用します。具体的には、「需要ありの確率が80%以上なら、優先営業顧客」としたり、「需要ありの確率が30%以下の場合は、金融サービスを幅広く紹介してニーズを探るような営業手法を取る」などの活用事例があります。

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そのほかの活用事例

以下のような業界で活用事例があります。

  • アパレルブランドにおける需要予測
  • 小売業における需要予測
  • 飲食業の来店者数予測
アパレルブランド

アパレル業界においては、在庫の管理などで需要予測が活用されています。シーズン終わりのセールに代表されるように、アパレル業界では在庫管理の問題が根強く残っています。在庫が残ってしまうことで、単純な損失になったり、在庫を保管する土地代が余計にかかってきてしまいます。需要予測は、余ってしまう在庫が発生しにくい適切な生産量を予測するなどの用途で活用されています。

小売業

小売業においては、商品の販売量などを予測するために需要予測が活用されています。過去の販売データや店舗ごとのデータなどのデータに加え、チラシ掲載の有無やキャンペーンの有無、さらには外部情報として天気のデータを組み込んだりして需要を予測している事例があります。これらにより仕入れ量の調整や在庫数の最適化、さらには従業員の業務効率化などを実現しています。

飲食業

飲食業においては、主に来店者数を予測する形で活用されています。来店者数全体や客層ごとの来店者数を予測することで、必要な量だけ仕込み作業をおこなうなどの効率化を実現する事ができます。活用するデータとしては、小売業と同様に、過去の販売・売上データやキャンペーンなどの有無、さらには天気などのデータを活用している事例があります。また、需要予測からフードロスの削減や従業員のシフト管理などにも応用する事ができます。

需要予測の注意点

需要予測をおこなう際の注意点は以下のとおりです。それぞれ簡単に解説いたします。

  • 100%の精度は不可能
  • 前処理が必要
  • 予期しない外部要因に弱い
  • 予測を人が解釈する必要がある
  • 予測には過去のデータしか使えない
100%の精度は不可能

需要予測に限らず、予測する際に100%の予測をすることは不可能です。業界のドメイン知識やこれまでの経験などからどれくらいの精度が必要か事前に共通認識を持っておくことが必要です。

前処理が必要

重回帰分析などの統計学的な手法や、機械学習・AIなどのデータサイエンス的な手法を用いる場合は、データの前処理が必要になります。多くの場合でプログラミングによる大規模な処理や専門的な処理を必要とする点に注意が必要です。

予期しない外部要因に弱い

需要予測は学習に使用していないような、予期しない外部要因を踏まえた予測をすることはできません。例えば競合商品の大幅値下げによる自社商品の売上低下などです。数値などを出すだけであれば可能ですが、精度は落ちてしまうと考えられます。

予測を人が解釈する必要がある

需要予測に対して、なぜその結果を出力するかを判断するのは人の役目です。重回帰分析における偏回帰係数や、MMMにおける貢献量などを見て、予測にとって重要な変数を見極めたり、ある程度自社でコントロール可能かつビジネスインパクトの大きい変数に資源を投入していくなどが重要です。

予測には過去のデータしか使えない

予測をするための学習データは全て過去のデータです。過去当たり前だったことも、現在やこれからの未来では当たり前ではない可能性があります。つまり、過去のデータがあてにならない可能性があるということです。学習データ(過去のデータ)の背景を理解し、そのデータが今もおおよそ予測に役立つ可能性があるか、判断する必要があります。

まとめ

今回は需要予測に関する解説をいたしました。本記事のまとめは以下の通りです。

  • 売上や製品の生産数などの自社への需要から市場全体のトレンドなどの需要も予測できる
  • 需要予測をすることで様々な事業課題を解決することができる
    • 機会損失や過剰在庫を減らす
    • 人員の配置を最適化し、適切な労務管理をおこなう
    • 個々の需要を確率的に算出し、選択的な営業をおこなうことができる
  • 様々な手法を用いて需要を予測することができる
    • 回帰分析
    • 時系列分析
    • 平均値による予測
    • 応用的手法による予測

需要予測の特性や注意点を踏まえた、一歩深い分析の役に立てれば幸いです。

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  1. https://www.cic.co.jp/index.html ↩︎

この記事を書いた人

北海道大学卒業後、労働組合にて事務・国際関係を経験し、2019年に当サイトの運営会社であるデータアナリティクスラボ株式会社に転職しデータサイエンティストとなる。以後、広告業界を中心に従事し、2023年、本サイトを立ち上げに関わり編集も担当する。 趣味はスポーツアナリティクスと読書。

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