お気軽にお問い合わせください
因子分析とは?ビジネス活用や注意点を解説!
因子分析とは?
因子分析とは、観測変数間の相関関係から、データの背後にある直接的には観測しづらい要因(感情、イメージ、性格など)を見つけ出すことを目的とした分析です。つまり「多数あるデータの背後に存在する共通点を探し出す分析」といえます。
この手法は主にマーケティング分野や心理学で広く利用されています。具体的な分析の流れは「ビジネスシーンでの活用」の章で解説いたします。
分析によってわかること
① データ全体の構造がわかる
下図の左側には、6つの観測変数の相関係数をまとめた相関行列を示しています。この相関行列を見れば変数同士の大まかな関連性はわかりますが、全体の構造を理解することは難しいです。しかし、因子分析をおこなうことで、直接観測できない潜在因子を推定し、データ全体の構造を明らかにすることができます。
② データの要約ができる
例えば、Aさん、Bさん、Cさんそれぞれの特徴を示したい場合、下表のように各観測変数のスコアだけを見ても、それぞれの特徴を把握することは難しいです。しかし、各潜在因子からの影響の度合いである「因子得点」を算出することで、その人がどのような性質を持っているのかを理解することができます。
分析に必要なデータ
因子分析は、項目間の相関関係からデータの構造を明らかにする分析手法です。そのため、「顧客満足度スコア」や「購買頻度」といった量的なデータが必要になります。また、アンケートで使用されることが多い5件法(5:とても当てはまる〜1:全く当てはまらない)なども量的変数として分析することができます。一方で、自由記述などの質的なデータは、因子分析には適しません。
ビジネスシーンでの活用
続いては、ビジネスシーンにおける具体的な活用方法についてご紹介します。
アンケートデータを用いた顧客分析
消費者の購買行動に影響を与える要因を検討するために、商品に対する「感情」やブランドの「イメージ」といった潜在的な要因を探ることがあります。その際に因子分析を用いることで、背後にある構造を理解することにつながります。
あるメーカーが自社製品・サービスに関する顧客アンケートを実施し、因子分析によってどのような要因が購買行動につながっているかを分析した事例を紹介します。
上記のデータから、消費者の購買行動に影響を与える潜在的な要因を明らかにするための手順をご紹介いたします。
はじめに、データからいくつの因子を抽出するかを決めます。因子の数は仮説に基づいて決める方法や、「スクリープロット」を用いる方法があります。
次に、因子の抽出方法と因子軸の回転方法を選択します。抽出方法としては「主因子法」や「最尤法」などがあり、回転方法としては「直行回転(バリマックス回転など)」や「斜交回転(プロマックス回転など)」が使用されます。分析の目的やデータの性質、解釈のしやすさに基づいて適切な方法を選択することが求められます。回転は必須ではありませんが、多数の質問項目が存在することが多いビジネスの現場では、回転させることで各因子がどの観測変数に強く関連しているか、解釈がしやすくなる場合があります。
これらのプロセスを経て、下表のとおり因子負荷行列が作成されました。今回は適合性と解釈のしやすさを考慮し、最尤法とプロマックス回転を使用して因子分析を実施しました。
下の図はパス図と呼ばれ、抽出した2つの潜在因子がそれぞれどの観測変数にどの程度影響を及ぼしているかを示すことで、データ全体の構造を視覚的に表現することができます。各因子と関連している観測変数の内容から、因子1を「好意度」、因子2を「顧客体験」と解釈しました。
さらに下の表のとおり因子得点を算出することで、各回答者がそれぞれの因子にどの程度影響を受けているかも明らかになりました。このようにして、データ全体の構造や各回答者の特性を詳細に把握することができます。また、因子得点の算出によって、重要な情報を保持したまま変数の数を効果的に削減できました。この結果、データの解釈が容易になると同時に、他のモデルでの計算に必要なコストも削減できるというメリットが得られます。
一方で、慎重に分析をおこなう場合は「クロンバックのα係数」を算出して、項目間の信頼性を確認し、必要に応じて項目数を調整することもあります。
また、より発展的な分析として、潜在変数を説明変数として活用した重回帰分析や、さらに複雑な関係性を明らかにするための構造方程式モデリング(SEM)があります。これらを実施することで、因果関係や相互作用の理解を深めることができます。
当サイトの運営会社であるデータアナリティクスラボ株式会社は、データサイエンティストのプロフェッショナルサービスを提供しています。因子分析の実績なども多数ございますのでお気軽にご相談ください。
ご相談・お問い合わせはこちらから
その他の活用事例
アンケートデータを用いた顧客分析のほかに、以下のような活用例があります。
1. 性格診断による適性検査や人材分析
因子分析によって、アンケートや評価結果から得られるデータを基に、例えば、外向性や協調性などの因子を抽出し、それぞれがどの程度個人の性格形成に寄与しているかを評価することが可能です。このような分析は、採用選考や人材育成において、個人の強みや課題を明確にするのに役立たせることができます。
2. 商品分析によるマーケティング戦略の策定
異なる商品が持つ共通の特性や消費者の購買動機を、因子分析によって明らかにすることができます。具体的には、商品の構成要素(機能性、デザイン、価格帯など)に関する情報を基に因子を特定し、それが顧客の商品選択にどのように影響を与えているかを評価します。これにより、市場での競争力などを明確化し、より効果的なマーケティング戦略を策定する手助けとなります。
当サイトの運営会社であるデータアナリティクスラボ株式会社は、データサイエンティストのプロフェッショナルサービスを提供しています。因子分析の実績なども多数ございますのでお気軽にご相談ください。
ご相談・お問い合わせはこちらから
因子分析の注意点
因子の解釈は分析者が決める
抽出した因子の持つ意味は自動的に表示されるわけではなく、分析者自身がその意味を考察する必要があります。人によって解釈が異なることもあるため、ステークホルダーとの合意を得ながら慎重に意味を考察していく必要があります。
また、具体的に因子の名前を決める際には、自分だけが理解できる用語や聞きなれない用語、一部の項目にしか当てはまらないような用語は避け、誰にでも伝わりやすい名前にすることが求められます。
このように、人間の主観に基づいた作業を、できるだけ客観的に説明可能な意味付けができるかどうかが、分析者の腕の見せ所になります。
主成分分析との違い
因子分析と似た分析手法に「主成分分析(PCA: Principal Component Analysis)」があります。どちらも複数の観測変数を要約する代表的な手法ですが、その目的とアプローチには明確な違いがあります。
因子分析は、観測変数間の相関関係から、データの背後に潜む要因を見つけ出すことを目的としています。一方、主成分分析では、情報の損失を最小限に抑えながら、多数あるデータを少数の主成分によって表現することを目的としています。つまり、原因と結果の順番が逆であるということです。
また因子分析では、各因子と各項目が持つ独自の因子(独立因子)を区別して扱います。一方、主成分分析では独立因子は考慮されません。したがって、独立因子の有無も違いの一つといえます。
これらの違いは、それぞれの手法が解決しようとする問題の性質に由来しており、どちらの手法が適しているかを判断するためには、調査を計画する段階で問題や目的を明確にすることが重要になります。
まとめ
今回は因子分析について解説いたしました。
因子分析は観測したデータに影響を与える背後にある要因を探索し、全体の構造や要約をすることができる分析手法です。紹介したように、アンケート結果から消費者の心理的な要因を探索することや、多数ある商品の特性を明らかにすることができるため、ビジネスの現場でも大いに活用することが可能です。
因子分析の特徴や注意点を踏まえた、一歩深い分析に役立つ情報となれば幸いです。
当サイトの運営会社であるデータアナリティクスラボ株式会社は、データサイエンティストのプロフェッショナルサービスを提供しています。因子分析の実績なども多数ございますのでお気軽にご相談ください。
ご相談・お問い合わせはこちらから